東京高等裁判所 昭和26年(ラ)129号 決定
案ずるに、行政処分によつて創られる法律上の効果は原則として第三者に対してもその効力を有するのみならず、行政事件の訴訟においては、訴訟の目的たる行政処分について真の当事者でない行政庁が訴訟手続上の当事者となり、実質上の当事者であるものが全く局外者の地位に立つ場合が少くない、しかも行政処分は公益に影響するところ大であるから、行政処分に対する不服の訴訟においては、訴訟の結果につき利害関係を有する行政庁その他の第三者を訴訟に参加させる必要があるのであつて、その訴訟参加をその意思のみによらしめることなく、進んで裁判所が職権をもつて右第三者を訴訟に参加させることはもとよりその所であり、これがために行政事件訴訟特例法第八条は制定されたのである。さりながら、この強制参加の制度は同法が初めて採用したものでなく、昭和二十二年法律第五九号裁判所法によつて廃止された行政裁判法においても採用されていたのであつて、同法第三十一条はこれと共に事件につき利害関係ある第三者の任意参加をも認めていたのである。しかして右行政裁判法の採用していた訴訟参加の制度は、行政事件訴訟特例法において継受されているのであつて、これは同法第一条、第八条等の規定に照して領するに十分であり、ただ同法は右第三者の任意参加を民事訴訟法の定めるところによらしめているだけである。ところで民事訴訟法第六十六条は参加の許否に関する決定に対しては、即時抗告の方法により不服申立の途が拓かれているが、強制参加を命じた決定に対しては、行政事件訴訟特例法中不服申立を許す旨の特別の規定はない。そこで本件のように裁判所が同法第八条に基き第三者に補助参加を命じたような場合に、民事訴訟法第六十六条の準用によつて、当事者からこれに対し即時抗告の方法により不服を申立てることができるか否かについては、多少議論の生ずる余地はあるが、右決定が裁判所の恣意に基くものであつてはならないものであるから、積極的に解すべきものと考える。もとより行政事件訴訟特例法においては、同法第九条において職権による証拠調を認め、第十一条において違法な処分であつても、請求を棄却すべき場合のあることを定めていて、これらによると、行政訴訟の職権的性格を窺い得るのであるが、このことよりして、裁判所が職権をもつて第三者の訴訟参加を命じたような場合に、当事者はただ手を措くのほかなく、終局判決に対する上訴の機会にのみこれに対する上訴裁判所の判断を受け得るに止まるものとすれば当事者の権利が不当に害される結果を生ずることも考えられるので、消極説には到底左袒することができない。